HIV検査の種類について-6.リアルタイムPCR検査-
HIV-1の核酸の一部の見つける検査法です。
注意:HIV-2は検出出来ません!!
【リアルタイムPCR検査の原理とは】
HIV-1の核酸を化学的な方法で、1億倍程度に増幅して検査をすることから検出感度も非常に高く血液中の微量のHIV-1を調べることが出来ることから、HIV-1感染の判断検査として広く用いられています。
【リアルタイムPCR検査の正式名称は】
『コバス taqMan HIV-1「オート」』と呼びます。
健康保険の名称は『HIV-1核酸増幅定量精密検査』です。
【どのように検査をするのか】
1.検査キット附属の定量標準HIV RNAを含む「カオトロピックイオン溶液」で、HIV-1を溶解して、シリカ粒子であるTaqMan磁性粒子懸濁液を使用して、HIV-1 RNA及びHIV-1RNAを精製する。
2.試料より抽出されたHIV-1 RNA及びHIV-1 QS RNAに自動調製された増幅試薬を加える。
3.核酸抽出から増幅試薬の添加までの工程は、専用機器コバスAmpliPrepを、RNAの増幅及び定量は専用機器コバスTaqManを使用して行われる。
4.各サイクルの「Z05 DNAポリメラーゼによる相補鎖の伸長」と「DNAプローブの切断・遊離による蛍光発光」の各ステップで測定された蛍光強度がリアルタイムにモニターされ、反応液中のHIV-1 RNA及びHIV-1 QS RNAの増幅曲線が得られます。
5.この際、HIV-1 RNA用のTaqManプローブとHIV-1 QS RNA用のTaqManプローブでは波長の異なる蛍光色素を使用していることから、それぞれの識別は可能となります。
6.得られた増幅曲線から蛍光強度が一定以上となるサイクル数を求めて、カットオフ値(Ct値:Critical threshold value)とします。
7.、血液中のHIV-1 RNA濃度を計算すます。
8.発光強度が一定以上に達しないときは、HIV-1 RNAのCt値として計算されないために、HIV-1 RNAは算出されません。
9.検査法を端的に言いますと【血液中のHIV-1を特殊な薬品で、1億倍に増殖させて、HIV-1の遺伝子の一部の核酸を機械的に調べる】検査です。
【検査成績の記録】
検出範囲は、40~1.0×10の七乗コピー/mLです。
HIV検査の種類について-5.NAT検査-
核酸増幅検査(Nucleic Acids Amplification Test)のことです。
この検査は、ウイルスを構成する核酸(DNAまたはRNA)の一部を約1億倍に増幅(数を増やす)し検査を行うことから非常に感度と特異性が高く、ウインドウ・ピリオドの短縮を可能にします。
NAT検査は、日本赤十字社の血液センター専用の検査方法で、医療機関や保健所で受けることは出来ません。
血液センターでは1999年からNAT検査を導入しています。
血液センターのNAT検査は、HIV、HBV、HCVの検査を同時に行う検査法です。
従ってNAT検査が陽性になるとHIV、HBV、HCVのそれぞれの個別NAT検査を実施してどれが陽性かを鑑別する必要があります。
血液センターのNAT検査は、HIV-2の検出も可能となっています。
※リアルタイムPCR検査はHIV-2を検出できません※
tag : NAT検査 リアルタイムPCR検査
HIV検査の種類について-4.イムノクロマト法による迅速抗原抗体検査-
これらは血清、血漿及び全血中のHIV-1の抗原であるp24とHIV-1及びHIV-2抗体の検出をおこなう第四世代(抗原+抗体)の迅速HIVスクリーニング検査試薬です。
両者とも特異性と感度はほぼ同一です。
【検査を受ける時期】
1.HIV-1の抗原であるp24を見つけるためには、不安な行為から30日で受けるのが最善。
※50日までは信頼できる結果は得られますが、不安な行為から50日を超えると血液中のHIV-1の抗原であるp24の量が少なくなっていくことから見逃し偽陰性となる確率が高くなります。
2.HIV-1とHIV-2の抗体を見つけるためには、不安な行為から12週で受ける必要があります。
【結果の解釈】
1)不安な行為から30~50日で陽性・・・HIV-1の感染の疑い
2)不安な行為から12週で陽性・・・HIV-1又はHIV-2の感染の疑い
※どちらに感染しているかは、再度HIV-1とHIV-2の検査を個別に実施する必要があります※
3)不安な行為から12週で陰性・・・HIV-1とHIV-2共に感染は否定。
4)不安な行為から30日で陰性・・・HIV-1の感染は否定できるが、HIV-2の感染は否定できていないので、12週で陰性を確認する必要があります。
tag : イムノクロマト法による迅速抗原抗体検査 エスプラインHIV Ag/Ab ダイナスクリーン・HIV Combo
HIV検査の種類について-3.第四世代抗原抗体検査法-
1.CLIA法(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)
2.ECLIA法(Electro Chemiluminescent Immunoassay:電気化学発光免疫測定法)
3.ELFA法(Enzyme Linked FluorescentAssay:蛍光酵素免疫測定法)
イムノクロマト法による第四世代抗原抗体検査は次回解説いたします。
HIV-1のコア蛋白質であるP24抗原を検出するのが第四世代検査薬で、HIV抗原抗体検査と呼ばれます。
tag : HIV 第四世代抗原抗体検査
HIV検査の種類について-2.第三世代抗体検査-
【HIV抗体検査のエライサ法とは】
エライサ法とは免疫学的測定法のひとつで、抗体を使った免疫学的測定法のひとつでもあり、正式名称は,Enzyme-linked immuno-sorbent assay と言います。
エライサとは、このEnzyme-linked immuno-sorbent assayの頭文字のELISAの略称です。
別名酵素免疫測定法とも言われますがエライサ法の方がよく知られています。
また、EIA法とも呼ばれます。
EIA法は、Enzyme Immunoassayの略称です。
【測定原理】
エライサ法とEIA法の測定原理は同じです。
エライサ法は、マイクロプレートやチューブにHIV抗原を吸着させて検査を行いますが、EIA法はビーズにHIV抗原を吸着させて検査を行います。
エライサ法は抗体と酵素を使った測定法です。
一般的には、96のウェル(穴)を持つマイクロプレートを使い、このウエル内部の表面にHIV抗原を吸着(コーティングとか固相化とも言います)させて使用します。
このHIV抗原は、血清又は血漿中にあるHIV抗体を補足するために使われます。
HIV抗原を吸着したウエルに血清または血漿を加えて一定温度で一定時間放置し、ウエルを薬品で洗浄しそこに酵素標識抗体を加え更に一定温度で一定時間放置し、ウエルを薬品で洗浄し最後に基質を加えてから、酵素標識抗体の発色を機械で測定します。
血清又は血漿中にHIV抗体が存在すれば、ウエルに吸着させたHIV抗原にHIV抗体が結合し、この結合物に酵素標識抗体が更に結合し、発色するわけです。
血清又は血漿中にHIV抗体が存在しなければ、ウエルに吸着させたHIV抗原には何も結合しませんので、酵素標識抗体も結合すること無く発色もしません。