日本におけるHIV-2感染者の現状
なぜHIV-2が多くの感染者に対して症状を発症しないのか、これについては現在でも完全には解明はされていません。
しかし、最近の研究ではHIV-2に感染すると宿主の免疫反応が強くなるから、あるいはHIVそのものの複製能力がもともと弱いからAIDSが発症しないのではないかということが提唱されています。
1992年と2002年に合わせて2例のHIV-2感染例が報告されていますが、いずれも韓国人感染者です。
2006年に関東地域の病院を喘息発作を主訴として受診し、加療のために入院した70代の男性が、日本人の報告例としてははじめてのHIV-2感染患者であることが確認されています。
この男性は35年前(1971年)に西アフリカ・セネガルで交通事故に遭い、現地病院にて脾摘手術を受けた際に、現地人から輸血を受けた既往歴があることが判明しています。
なおこの男性は過去に献血歴はなく、また本症例にみられた喘息症状とHIV感染との間には特に因果関係はないと考えられています。
tag : HIV-2 性行為による日本人のHIV-2感染者
HIV-2-4.その他-
このことを証明するのは難しいのが現実です。
In vitro(イン・ビトロ) の研究ではHIV-2の感染は、HIV-1の感染を防いでくれているという結果が出ていますが、だからといってin vivoで完全に感染を防いでくれるわけではありません。
※In vitroとは試験管内などの人工的に創りだされた条件下で、各種の実験条件が人為的にコントロールされた環境であることを意味する※
※In vitroに対応するin vivo(イン・ビボ)とは、「生体内で」を意味する※
※In vitroは試験管内における実験では~の結果になり、in vivoは生体内の~という現象ということになります※
tag : HIV-2
HIV-2-3.HIV-2の性状-
この理由としては、
1.HIV-2に感染すると宿主の免疫反応が強くなる。
要するに感染した生体の免疫力が高くなり、HIV-2を押さえ込む
2.HIV-2の複製能力がもともと弱いからAIDSが発症しない。
AIDSを引き起こすに足りるHIV-2が生体内で増殖することが出来ない。
HIV-2の感染者がほとんどAIDSを発症しないことからして、HIV-2の複製能力が低いことと宿主の免疫応答が高まる、あるいは両方ではないかと考えられていますが、未だ確定はされていません。
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HIV-2-2.日本における性行為からの感染者-
この2名の日本人女性がわが国最初の性交渉からのHIV-2感染者ということになります。
その後、2015年12月時点まで新たなHIV-2感染事例は報告されていません。
また、今までに感染が判明したHIV-1の感染者の中にもHIV-2の感染者は認められていません。
2009年まで日本国内では性行為によるHIV-2の感染者は存在しなかったが、この日本女性2名のHIV-2感染者が確認されたことから、わが国でも、HIV-2感染者が拡大する危険性が指摘されています。
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HIV-2-1.日本での第一号患者-
既にお分かりのこともありますが、再確認のつもりでお読みください。
HIV-2は、HIV-1の発見より数年遅れて発見されたウイルスです。
主に西アフリカで局地的に流行しているしているウイルスです。
それでは、日本ではいつ感染が確認されたのでしょうか?
2006年6月、関東地域の病院に喘息発作を訴えて受診した70代の男性が日本人の第一号感染者です。
この70代男性患者のHIV検査結果は、エライサ法によるHIV抗体検査が陽性であることからウエスタン・ブロット法による確認検査の結果、HIV-1抗体陰性、HIV-2抗体陽性であることが判明しました。
この血清をタイプ特異的なゼラチン粒子凝集法(PA HIV-1/2、富士レビオ)およびペプチラブ法(サノフィ-パスツール)によっても、HIV-1抗体陰性、HIV-2抗体陽性であることが裏付けられました。
更にアンプリコア法(ロッシュ)による血漿中HIV-1 RNAの定量検査は陰性という結果が得られています。
感染経路としては、1971年(35年前)に西アフリカ・セネガルで交通事故に遭い、現地病院にて脾摘手術を受けた際に、現地人から輸血を受けた既往歴があることが明らかことと、他に輸血歴もなく感染するリスクが認められないことからして西アフリカ・セネガルで受けた輸血による感染と結論付けられました。
また、喘息症状とHIV感染との間には特に因果関係はないと考えられています。
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